僕はヒートテックを着ない

 

小川町店小野です。

僕はヒートテックを着ない

 

冬になると寒くて外に出たくない。

しかし、僕はヒートテックを着ない。

これは岩手出身のプライドと頑固な性格の僕が勝手に決めてしまったルールである。

だが、毎年うまく冬は超えてきた。それは岩手出身だから寒さに強いということではない。

東北出身の人は寒さに強いということではなく、着込み方が上手いのだ。

 

眠い目を擦り時計を見る。

今日もゆっくり眠ってしまった、もう12時半か。

起きたばかりでトレーシングペーパーのようにぼやけた世界の中で僕は歯を磨き顔を洗う。

最後にコンタクトを入れて、準備は完了。

トレーシングペーパーは破かれた。

 

さて、今日はどんな服を着ようか。

ここから始まる東北のテクニック。

一枚二枚三枚と僕は軽やかに着込んだ。

ここで忘れてはいけないのが気温のチェック。

普通の人ならば、この状態で外に出かけてしまうだろう。

しかし、僕は外の気温を確かめてから再考する。

まだ着込みが足りないな。

自分の未熟さを感じるとともにこれで外に出なくてよかったと安心感も感じる。

 

僕は慣れた手つきで洋服を数枚手に取り着込んだ。

5、6、7、、、、その後も着続けた。

ちょうどいい温度だ、部屋を出よう。

 

とんだ欠陥住宅だ。

人生で数回経験したことがある。

着込みすぎて部屋から出られない。

この歳ではもう揺らがない、きっと当時の僕であったら焦っていただろう。

僕は東北の人間だ。

こういうときはさらに着込んで家を壊す。

壊れた家を背に罪悪感と少しの怒りを感じつつ、今日もバイトへ向かう。

 

今日は11月20日。

最近給料日があったことと、少し家を出るのが早かったタイミングのおかげで買い物をする時間があった。

肌寒い。

僕は洋服を買い漁っては着込んだ。ひたすらに着込んだ。

気づけばライバルと肩を並べている。

地球と戦うのは初めてだ。

洋服を着込みすぎた僕の質量は地球のそれとほぼ一緒だった。

きっとあと二、三枚だろう。。。

僕はその二、三枚を着込み、地球を超えた。

中学二年生の時に誰もが物理を習うだろう。

どんなものでも膨大な質量となると重力を発生させる。

地球よりも大きな質量になった僕は、もちろん地球よりも大きな重力をもつ。

そう、地球の全てのものは地球から小野へと必然的に重力移住を始める。

 

とはいえ、必然的でなくとも、小野への移住を求めるデモは各地で繰り広げられていた。

そんな地球を越え、全てを奪い取った僕は自ずと地球の軌道を自分のものとする。

さぁ、始めるぞ。

こうなった以上は一年を300日にしよう。

いつか地球とぶつかることの問題点を後回しにして僕は突き進む。

その頃にはもう夏だろう。

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